【隣のマンション住民】
「ぎょっと思ったよ。なに?って。犬飼ってるから余計に、焼却とか何とかあると。えーって思って」
犬の飼い主も驚きを隠せない問題が、堺市西区の住宅地で起こりました。
【記者リポート】
「幹線道路沿いのマンションが立ち並ぶところですが、ありました、あそこですね。マンションの敷地になるんでしょうか。入口の真横に、ペット焼却炉設置計画地という看板が立てられています」
大きく書かれたペット焼却炉設置計画地の文字。築16年の分譲マンションの入口の脇に、去年7月ごろ、看板が立てられました。
【マンションの住人】
「普通は考えられへんけどね、こんなマンションの前にできるのは。こういう所でやられたら嫌やと思いますけどね」
【犬を飼っていたマンションの住人】
「(煙で)やっぱり臭いも付いちゃうと思うし、外出する時にあそこで焼かれてたりしたら、ちょっと嫌やなって気持ちには、なるかもしれないですね」
困惑するマンションの住民たち。看板が立てられるまで、ペットの焼却炉の話など全く聞かされていませんでした。焼却炉を作るとなると、煙が出たり人の出入りが増えたりするため、周辺の住民生活にも影響を与えかねません。突然持ち上がったこの計画は、一体誰が誰が立てたのか、土地の所有者を調べてみると…。
【記者リポート】
「ありました、こちら法務局が作ったあの一帯の地図になるんですけども、看板があった三角形の土地、別の所有者がいることになっています」
マンションの一角のように見えていた、およそ30平方メートルの土地。このうち3分の2ほどは、マンションとは別の不動産会社が所有していて、その会社が設置計画を立てているようなのです。住民から不安の声も上がる中、ペットの焼却炉を作ることに問題はないのか?
堺市に話を聞くと―。
【堺市保健所・藤川桂祐参事】
「動物の焼却炉の設置に関しましては、実は国の法令でも規制がございません。他都市では、条例を設置されてるところもあると聞いてますけども、堺市では条例は設置しておりませんので、現時点では。なので、今のところ、規制はできないという状況でございます」
(Q.止めるすべはない?)
「現時点ではございません」
法律上、ペットの死体の火葬については明確な規定がなく、対策は自治体に委ねられているのが現状なのです。およそ7人に1人が犬や猫を飼っている今、ペットは家族の一員だと捉える人は少なくありません。ペットの火葬施設は全国で1200ほどありますが、法律が追いついていないのです。
【ペット霊園閉鎖問題 去年4月】
関西テレビでは去年、大阪府枚方市で火葬場を備えたペット霊園が閉鎖し、利用者とトラブルになった問題を取り上げました。枚方市でもペットの火葬場の運営に関する規定はなく、運営者側の都合で突然、更地になってしまったのです。
【利用者は…(取材当時)】
「やってることが、ひどすぎますわ。家族同然の、人間といっしょですよね。犬かて」
長年寄り添ってきたペットと飼い主を繋ぐ場所で起きた問題。これを受けて枚方市は、ペット霊園や火葬場の設置を許可制にする条例案を作成。住宅から100メートル以上離し、事前に住民説明会を開くことなどを条件に許可することにしました。業者に明確な『責任』を課した形です。
一方、条例のない堺市では、どこにでもペットの火葬場を作ることができます。土地の所有者である不動産会社はなぜ、マンションの目の前に焼却炉の設置を計画したのか、会社を訪ねると…
【不動産会社】
「自分もペットを飼っていて、需要があるのではないかと思った。焼却炉の設置は法律違反ではないし、第三者から干渉される問題ではない。住民側から直接苦情が来ているわけでもない」
不動産会社は計画の具体的な内容はまだ決まっていないものの、規制がないことを知った上で看板を立てたと説明。さらに取材を進めると、計画を立てた別の理由も見えてきました。
そもそも会社はこの土地を、おととし購入しました。狭い土地なので、最初はマンション側に「自転車置き場にでもどうですか」と持ち掛けたものの、マンション側に拒否されたそうです。これでは、土地の購入にかかった費用や、固定資産税の分を取り戻せない…そこで思いついたのが、”ペットの焼却炉”を作る計画だったそうです。
こうしたトラブルが起きないようにするためには、法律や条例を整備するしかないのでしょうか?
枚方市によると、ペットの火葬施設などの設置について条例が作られているのは、大阪では、ほかに高槻市と箕面市だけということです。
2018年2月6日