ポエム-生命の賛歌(いのちのさんか)

ある朝の神話その10 神様と天使

それはある晴れた朝のことでした。

ここは真白い雲の上の広い広い世界です。
それはそれは立派なひげをたくわえた神様が天使をいましめていました。

天使は昨夜夢を運びに下界に降りたとき一人の少年に夢を与えるのを怠ってしまったんです。
それが神様のお怒りにふれたのです。

神様は天使にたずねました。
「おまえはどうして昨夜その少年に夢を与えなかったのか?」

天使はひざまずいて答えました。
「神様お許しください。実は私が運んだ夢はとても悲しい夢でその子が泣いてしまうと思ったのです。かわいそうに思えて夢はそのまま持ち帰りました。」

神様は腕を組みしばらく瞑想してからおっしゃいました。
「なるほど、おまえのしたことはある意味でいいことかもしれない。しかし、その子の長い将来を考えると必ずしも正しいことではないと思うよ。人生には悲しいことや苦しいこともたくさんある。その子もいろいろな経験をつみながら大きくなっていくんだよ。

その子が強くて丈夫な子に育つためにも、我々は見守ってあげなければならない。人にはそれぞれ皆その人の運命というものがある。人は自分自身で自分の道をしっかりと切り開いて生きていくものだからね。」

「神様、わかりました。どうもすみませんでした。」
天使は頭を下げて反省していました。
きれいな朝日を受け天界は銀色に輝いていました。

それはある晴れた朝のほんの小さなできごとでした。

K.M

ある朝の神話

ある朝の神話 その13 「おじいさんと小犬」
ある朝の神話 その12 「北風と牛乳ビン」
ある朝の神話 その11 「火山と赤い雲」
ある朝の神話 その10 「神様と天使」
ある朝の神話 その9 「雪とつらら」
ある朝の神話 その8 「コウモリとすずめ」
ある朝の神話 その7 「にわとりとひよこ」
ある朝の神話 その6 「青い星と赤い星」
ある朝の神話 その5 「朝顔と鈴虫」
ある朝の神話 その4 「もんしろちょうと蛾」
ある朝の神話 その3 「樫の木とセミ」
ある朝の神話 その2 「二十七日の月と金星」
ある朝の神話 その1 「木の葉と露」