ペット訪問記 特別編

ひらかた動物霊園 大阪府枚方市

突然閉鎖の近隣ペット霊園に対応したひらかた動物霊園

新しく改葬された供養塔

今年4月、大阪府枚方市にあるペット霊園宝塔が突然閉鎖され、テレビニュースでも取り上げられるほどの騒ぎになりした。
宝塔にペットを埋葬した遺族の人たちは困惑し、突然の閉鎖に憤りを感じるとともに、埋葬した遺骨の供養をどう継続するか大きな問題に直面します。
この混乱をおさめるべく、近隣のペット霊園ひらかた動物霊園が立ち上がり、大方の遺族が納得するかたちをとりました。
この問題の経緯と今後の課題をまとめます。

突然のペット霊園閉鎖告知

はじまりは宝塔の入り口に突然出された張り紙。
平成29年1月末日にペット霊園は閉鎖され、4月から工事に入るのでそれまでに引き取られなかった品々は処分するという内容です。

ペット霊園の入口に出された張り紙

遺族への個別の通知がされなかった為、実際に遺族の方々が閉鎖を知ったのは4月に墓石や構造物、供養塔が撤去された後でした。
供養塔から取り出された大量の遺骨は野ざらしで山ずみされ、張り紙と共にSNSで取り上げられ拡散し、ペット霊園の突然の閉鎖と行き場が無くなったペットの遺骨として大きなニュースになります。

供養塔から取り出され放置された遺骨

閉鎖までの経緯

宝塔は1991年に開園し、ペット火葬と霊園を26年営んできました。
業務を借地で行なっており、地権者から借地の返還を求められます。
裁判となり、敗訴して土地を返却することになりました。
同園を開業した経営者はすでに引退した状態に近く、日常の業務を引き継いだ人がいましたが責任者的な立場ではありません。
責任者として、今までペット火葬や霊園の運営に関わっていない元経営者の息子が対応にあたることになります。

運営されていたころの供養塔

元経営者の息子は遺族の連絡先がわからないことを理由に、遺族への通知なく霊園を閉鎖し、そのことを張り紙にして入り口に掲示しました。
他所への遺骨の移し替えや運営が引き継がれることもなく閉鎖に踏み切れたのは、法律的には違反していることが無いことが大きな点としてあげられます。

遺族の意向とひらかた動物霊園

供養塔から取り出された遺骨は山積みされた状態になっています。
また、他のペット霊園ではほとんど行わない自然葬というかたちで、遺体をそのまま土葬するかたちも取られていました。
土葬された遺骨は飼い主が掘り起こしても自分のペットの遺骨かどうかわからないという混乱も生みました。

土葬されたお墓(運営当時)。他のペット霊園では土葬はほとんどありません。

行き場が無くなった遺骨のニュースから、近隣のペット霊園はじめ、東京や九州のペット霊園からも遺骨を引き取って供養する申し出がありました。
ただ遠方に埋葬されるとご遺族のお参りがままならなくなります。
ひらかた動物霊園の中澤代表は自身が長年ペット供養にかかわる身から、遺族の気持ちを察し、ひらかた動物霊園で一括して引き受ける道を探ります。

しかし、これには大きな問題がいくつか出てきます。
一つは埋葬されていた遺骨は誰の所有か。合意が出来なければ動かすことが出来ません。
また、大量の遺骨を尊厳をもって供養するためには、場所の確保、供養塔の建築と多額の費用がかかること。
供養塔から出された遺骨は野ざらしの状態になっており、このままで長く置くことはできません。

まず、遺骨を移すことを宝塔の承諾を得ます。そして遺族の総意となる宝塔霊園遺族の会と話し合いを持ちました。
6月の時点では埋葬した場所を移したくないという遺族もおり、遺族の総意がまとまるまで成り行きを見守ります。
その後、大方の意見がひらかた動物霊園に移ることでまとまったため、ひらかた動物霊園でも移転の準備をすすめます。

供養塔のあった場所。現在は更地になっています。

ひらかた動物霊園での受け入れ

改葬の決定後、ひらかた動物霊園では受け入れ準備をすすめますが、長年この地で営んでいるペット霊園として大変行き届いた配慮をします。
それは新しく作る供養塔は従来からひらかた動物霊園にあるものと同等にすることでした。
この決定は中澤代表が受け入れる遺骨は同じ家族として受け入れるという考えに基づいています。
その結果、供養塔の設置場所や供養塔の石材など大変良いものになりました。
遺骨の量も多いため、遺骨を入れるために3mも岩を堀り削る難工事でした。

供養塔納骨室部分の工事

10月に無事改葬終了

供養塔は9月に完成し、遺骨を新しい供養塔へ移す改葬は無事に終わりました。
納骨式には動物供養協議会からも複数の僧侶が加わりお経を上げました。
一部に土葬されたままの遺骨を残した状態になっており全面解決ではありませんが、多くの遺族の方々はこれで一息ついたかたちとなりました。

解決に導いたもの

この問題が一応の解決をみられたのは、ほぼ丸ごとひらかた動物霊園で受け入れるという善意があったためです。
もしこの問題に手を差し伸べるところがなければ、大量の遺骨が野ざらしの状態で放置されていました。
受け入れには多額の費用を要し、全額を同園の負担としていますが、これが行えたのは長年ペット火葬に遺族とともに立ち会い、この地で霊園を営んでおり、遺族の方々のペットへの想いを深く感じとっていたからです。

ペット霊園これからの課題

ペット霊園は民間で営んでおり、今回のようなことが別の場所で発生しないとは言えません。
発生する原因の一つはペット火葬・霊園の開設にはなんの資格や審査もいらないことです。
また、そもそも法律上ペットが物として扱われているためです。
この問題を解決すべく中澤代表は法令の一つである動物愛護法の中に亡くなったペットの尊厳を守ることも入れるべきと提言しています。
まさにその時期が来ているものと思います。

供養塔へはお参りする人が絶えません

ひらかた動物霊園の園内

園内は明るくお花が絶えません

納骨堂は内部からLED照明が照らされ明るい雰囲気