ポエム-生命の賛歌(いのちのさんか)

ある朝の神話その01 木の葉と露

それはある晴れた朝のことでした。
小さな透明の美しい露が一枚の新緑の若葉に宿っていたんです。

露は言いました。
「木の葉さんなんだかとってもうれしそうね。」
木の葉は笑って答えたんです。

「そりゃそうだよ。お日さまは出るし明るくってすがすがしくてとても気持ちがいいじゃあないか。それとも君は朝がきらいなのかい?」

露は小さく答えました。
「ええ、とっても楽しいわ。でもお日さまが出ると私は出発しなければならないの。」
「出発って?」
木の葉は不思議に思ってたずねたんです。

「どこかにいっちゃうの?いつまでも僕といっしょにいればいいのに。」
「ありがとう。でも私はいかなければならないの。」
露はそっとささやきました。
「さようなら木の葉さん。」

木の葉は必死に叫びました。
「露さん、どこへいくの。どこにもいかないで。」
「私は遠い遠い世界へ行くの。
でもいつかきっと帰ってくるのよ。」

露は悲しげにしかししっかりとした口調で語りました。
「さようなら、さようなら木の葉さん。」

それはある晴れた朝のほんの小さなできごとでした。

K.M

ある朝の神話

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