<ポエム>ある朝の神話その12 北風と牛乳ビン

それはある晴れた朝のことでした。
ある家の玄関先に1本の空の牛乳ビンが置いてありました。

その牛乳ビンはいつも牛乳配達の少年がきてくれるのを
楽しみに待っていました。

ところがその朝はいつまでたってもその少年は来てくれません。
そこを灰色のコートを着た寒い北風が通りかかりました。

北風は牛乳ビンに話しかけました。
「ビンさん、どうしていらいらしているのかい。」
ビンは即座に答えました。
「いつも朝早く来てくれる牛乳配達の少年が、今日は
まだ来てくれないんです。それでどうしたのかなって思って。」

北風は暗い顔をして語りました。
「ビンさん、彼はいつまで待っても来てはくれませんよ。
実はその少年は、昨夜君を運んだあとで自動車事故で
死んでしまったんだよ。街角で多くの君の仲間とともに
亡くなったんだ。」

牛乳ビンは驚き、青ざめて話しました。
「それは本当ですか?全くなんということでしょう。
彼は母一人、子ども一人の親孝行の明るい少年だったのに。
私は彼に会えるのを毎日とても楽しみにしていたのです。
こんなことなら私も一緒に壊れてしまえばよかった。」

北風は説くように語りました。
「ビンさん、あなたにはたいへん気の毒なことかも
しれませんが、いくらなげいても彼は帰ってきません。
いつまでもくよくよすると彼も喜びませんよ。」

牛乳ビンはうつむいたまま必死に涙をこらえていました。
まだ、冷たい冬の朝、牛乳ビンには多くの水滴がついていました。

それはある晴れた朝のほんの小さなできごとでした。


K.M

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